■■ 夏、まどろみ。 ■■
「直ちゃん…暑いぃ…」
「じゃあクーラー入れよう」
「風邪引いちゃうよ」
「じゃあこのまんまで」
「やぁ…暑いじゃん」
こんな押し問答を続け始めて早20分。
夏のある休みの日の真昼のベッドの中。
大好きな人を腕の中に閉じ込めてたら、嫌がられた。
「大体直ちゃん、僕があれだけ駄目って言ったのに痕いっぱいつけるし…」
「だって宮田っちが可愛…」
「あ!これ歯型だ!直ちゃん噛んだの!?」
人の話全然聴かないし。
宮田っちを抱き締めてるのは俺なのに、しかも後ろから抱き締めてるのに。
会話の主導権は宮田っちが握ってるなんて、何だか少し情けない。
「だって宮田っち、何か甘かったから」
「甘っ…そんな訳無いじゃん!」
「甘いよ」
首筋に顔を埋めて、ずらしたパジャマから覗く肩に口付ける。
「宮田っちは白くて甘くて、砂糖菓子みたい」
ぺろ…と素肌を舐め上げると、甘い甘い声が耳に届く。
「…なぉ、ちゃ……んっ…」
なぁに、なんてはぐらかしてみせたり。
「まだ、真昼間…」
「良いじゃん、たまには」
すると宮田っちは、んー…と唸ってもそもそと俺の腕から逃げようとした。
「直ちゃん…それ、前の休みの時も言ったでしょ…」
「そうだっけ」
「そうだよ!」
ごろん、と勢い良く寝返りを打たれて、目と目が合う。
「その前も、その前もだよ!」
「…そうだっけ」
「誤魔化しても駄目!」
ぺちっと頬を軽く叩かれて、痛くも無いのに痛いなんて言ってみて。
頬に触れる宮田っちの手をそっと握る。
「だって俺、宮田っちと一緒にいたいもん」
こうやって、二人だけで、何気無い会話ではしゃいだり、じゃれあったりしていたい。
「前も、今も。これからだって」
暑い夏も、寒い冬も。
俺の隣には、ずっと宮田っちが居れば良い。
「直ちゃん…」
仔猫みたいに、胸の中に擦り寄って来る宮田っちを抱き締める。
むき出しの肌に触れるサラサラの髪がくすぐったい。
「…クーラーは駄目だから、扇風機回して?」
「それはつまり、べたべたくっついても良いよ、事?」
「ッ言い直さないでよ…!」
「素直じゃないなぁ」
でも、そんな君も好きだから。
微笑を零して、照れて瞼を伏せる宮田っちのおでこにキスをして、細い身体を抱き締めた。
春も夏も秋も冬も、こうやって二人一緒に居れたら良い。
▲end