■■ infinity ■■





現場で会う可愛い声の先輩。
不慣れな自分を何かと心配したり気遣かってくれてたりして。
ちょっぴり、次に会う事を楽しみにしていた。

今日は久し振りに一緒の収録。
なのに今日は、いつもの元気が、彼らしさがなかった。

「どうかしたんですか?」
「えっ…何が?」

隣に腰掛け、ミルクティーの缶を手渡す。

「何が、じゃないですよ。今日ちょっと変ですよ?」
「別に変じゃないよ。噛んだりもしてないし…」
「そういう意味じゃなくて…何つか、元気がないって言うか…」

俺が言葉に困ってしまうと、カツンとプルタブを明ける音がして、宮田さんは缶に口を着けてから下を向いたまま喋った。

「何で解ったの…?皆気付かなかったのに…」
「え…何で、って…」

そういえば何故だろう。
きっと皆が気付かない様に隠していた筈なのに。
何で俺は気付けたのか…。
すると宮田さんは此方を見て、ふわりと微笑んだ。

「今日ね、ちょっとだけ熱っぽくて…頭痛が酷いんだ」
「なっ大丈夫なんですか?!」
「熱はそんなに高くないし、薬も飲んだよ」

体調管理が出来ないなんて…と笑って言う宮田さんに、胸がチクリとした。

「具合が悪いなら無理したら駄目ですよ!体調管理云々の前にもっと自分大切にして下さいッ!」
「ご、ごめんなさい…」

俺がまくし立てる気迫にしゅんとしてしまった宮田さんは、また俯いてしまった。

「あ…済みません、俺偉そうに…」
「ううん、言う通りだよ…僕、無理しちゃう癖があるみたいだし」

苦笑いして、此方を見る宮田さん。
そんな姿がいたたまれなくて、思わず手を差し述べていた。

「俺を頼って下さい」

缶を握る宮田さんの手を、上から触れる。

「無理しそうになって、辛くなったら俺を頼れば良いですから」

最初はきょとんとしていた宮田さんも、いつもの笑顔に戻ってくれて。

「…有難う、達央君」

その笑顔に、心臓がトクンと高鳴った。


宮田さんの小さな変化に気付ける程、無意識で宮田さんを見詰めてて。
宮田さんの為に何かせずにはいられなくて。

確実に、俺はこの人に惹かれ始めている。

俺の中に生まれた小さな感情は、恋と呼ぶにはまだ幼いけど…きっともっと大きなものになる。
そんな予感がした。





▲end