■■ sweet heart ■■
幸季は、頭を撫でてやるととても喜ぶ。
その姿はまるで小型犬の様で、尻尾がついていたらきっとちぎれんばかりに振っていそうで、可愛らしくて仕方が無い。
「森川さんっ」
今日何があったとか、何を食べたとか、そんな他愛無い事をとても楽しそうに、嬉しそうに手振りを混じえながら話す。
そんな幸季が可愛くてふと口元を緩めると、幸季は不思議そうに此方を覗き込んだ。
「僕、何かおかしな事言いました?」
「いや。…お前が可愛いから」
正直に言うと、幸季はぱっと顔を赤くして。
「かっからかわないで下さい…っ!」
「からかってなんかないさ。本当の事だ」
微笑って、頭を撫でていた手を頬に添える。
「可愛く…ないですよ…」
真っ赤な顔を下に向けて、拗ねた様に呟く。
「可愛いよ」
「…もぅ…可愛くないですっ」
そう言ってそっぽを向いてしまった幸季の髪をそっとすく。
「…怒ったか?」
「怒ってますっ」
唇を尖らせたままの幸季に、思わず笑みがこぼれる。
「それでも可愛いよ」
何か言おうと此方を向いて口を開きかけた所に不意打ちで口付ける。
「んっ………も、森川さんッ」
唇を離すと、幸季は顔を真っ赤にしている。
「不意打ちなんて反則…っ」
「嫌か?」
不敵に微笑えば、幸季はむー…と唸ったかと思うと俺の胸にがばっと飛び込んで来た。
「…嫌じゃないです」
下から聞こえる不服そうな声に、やはり『可愛い』と思ってしまって。
そっと幸季の背中に手を回し、首筋から後頭部をゆるゆると撫でる。
「ん…くすぐった…」
身を縮めて顔を上に向けた所で、またキスをする。
ちゅ、と音を立てるだけの軽くついばむ様なキス。
「またっ」
「嫌じゃないんだろ?」
意地悪く微笑めば、また小さく唸りを上げて。
…と思ったら、いきなり首に腕を回されて引き寄せられて、キスをされた。
「お返しですっ」
ふいっとそっぼを向いてしまうけど、柔らかい髪から覗く耳は真っ赤で。
一つ一つの仕草が可愛くて仕方が無い。
先程背に回した腕に力を込めて、少し強引に抱き寄せる。
「森川さっ…」
可愛くて、愛しくてたまらなくて。
長い前髪を指で撫で、そっと額に口付けを落とした。
▲end