■■ kiss ■■
「宮田君、こっち来て」
「緑川さん?」
それは収録後の一時。
人影の無い物影からこっそり宮田君を手招きする。
「どうしたんですか?」
「んー…プレゼント、かな」
「?」
何の疑いもせずに、不思議そうに此方にちょこちょこと歩いて来る仕草はとても可愛い。
「プレゼントって何ですか?」
屈託の無い、期待に満ちた瞳で此方を見る宮田君に、悪戯心を刺激される。
「じゃあ目閉じて」
「?…はい」
瞳の閉じられた無防備な顔。
面立ちには何処か幼さすら感じられて。
素早く顔を近付けてキスをする。
「んッ?!…んっ…ぅ…!」
それは舌で口内を犯す様な濃厚な、キス。
「んんっ…ふ…ぅん…っ」
少し息苦しいのか、シャツの胸元をぎゅっと掴まれる。
それでも舌の動きは止めない。
口の中をまさぐって、逃げる宮田君の舌を絡め取る。
「ッ…んぅ…んっ…」
すっと目を開けると、宮田君は苦しげに眉をひそめて、目尻に涙を浮かべている。
「んはッ!…はぁ…は…」
少し可哀相になって唇を離すと、宮田君は大きく肩で息をしながら此方を睨んだ。
「みど…か…さ…ッ」
息の荒い宮田君は、頬を真っ赤に染めて、目尻に涙を溜めて。
そんな顔で此方を睨まれても迫力は無いし、寧ろ可愛いとしか言いようがない。
「何…で、キス…ッ」
「ん?
だって、音だけじゃ物足りなかったから…ね?」
右手を赤い頬に添えて微笑むと、宮田君は恥ずかしそうに下を向いてしまって。
そんな初な反応が可愛くて、耳に顔を寄せて囁く。
「音だけより全然可愛かったよ」
途端に肩を押され、近かった体を離される。
「緑川さんやらしいぃっ!」
唇を手で抑えて必死に此方を睨んで来るけど、それも可愛い。
「宮田君だってあんな声出して……凄くいやらしいよ…」
声のトーンを下げて囁くと、宮田君は堪えられないと言わんばかりに腕を掴んで来て、僕の肩口に顔を埋めた。
「もう…緑川さん、やらし過ぎ…」
呟かれた声は、小さく震えていて。
「ねえ宮田君」
「…何ですか」
「もう一回キスしようか」
「なっ!」
驚いて顔を上げた所で、今度はバードキスをする。
まだ驚いた表情のままの宮田君に微笑みかけて言った。
「ディープな方が良かったかな?」
▲end