■■ special ■■
「成田さんって、意外と静かですよね」
「意外と…って?」
台本の確認をしていたら、話し掛けて来た隣の透明で柔らかな声。
「いつもはそんなでも無いんだけど…イベントの時は何かこう…はしゃいでるって言うか…」
そこまで言うと宮田君はむむ…っと悩み込んでしまった。
「…そうかもしれないね」
「っですよね!」
同意をすると、俯いていた顔をぱっと上げて、嬉しそうに此方を見た。
「イベントの時と、ちょっとだけど雰囲気違うんですよっ」
「僕には余り自覚は無いけどね」
「そうなんですか?」
ふーん、と感心した様に瞳を丸くする反応はまるで子供の様で。
可愛らしくて、思わず手が伸びて宮田君の頭を撫でていた。
「そうだね…。きっと…」
「きっと?」
不思議そうに此方を捕らえる瞳は真っ直ぐで。
「僕が変わるのは、宮田君と二人きりだからだよ」
「えっ…?!」
途端、みるみる頬が赤く染まって行くのが可愛らしい。
「それって…その…」
もじもじと、此方を見たり俯いたりする宮田君に、頭を撫でていた手を頬から顎へ移動させる。
「あの…成田さん…」
「何?」
にこりと微笑んで、恥ずかしがる宮田君の次の言葉を促す。
「それって…僕だけ特別…って事ですか…?」
上目遣いで少し不安げに、照れながら此方を伺う宮田君のおでこにそっと口付ける。
「そ。宮田君が特別」
微笑むと、宮田君はとても嬉しそうにはにかんだ。
「僕、成田さんにとって特別…なんですね…っ」
「こんな僕、宮田君にしか見せないよ」
そう言って、肌に触れていた手で宮田君の唇をなぞる。
「…柔らかいね」
「ん…っ」
僕が唇に触れているから、宮田君は喋る事に気が引けるらしい。
でも、表情から大体何を言いたいかは解る。
「恥ずかしい?」
微笑みながら聞いても、宮田君は困った顔で此方に目で訴えて来るだけで、それがまた可愛い。
ゆるゆると指先を動かして遊んでいると、一瞬宮田君の目付きが変わった様に見えた。
かと思うと、ぺろりと指先をなぞる濡れた感触。
「…成田さ…ん…」
その言葉の端には明らかに熱が含まれていて。
こんな宮田君を見れるのも、僕だけかな…?
口付けながらふと、そんな風に思った。
▲end