■■ Y ■■
不意打ちで、キスをした。
「な、何…?」
「32歳最後のキス」
「何それ」
くすくす微笑う宮田さんに、また一つキス。
「33歳初めてのキス」
「…櫻井君…」
時計の針が12を跨ぐ前後に、2回のキス。
宮田さんの唇は、柔らかくて、甘くて。
「ん…っ」
唇を舌で突いて、咥内に侵入させる。
「ッ…ふぁ、ん……ゃ」
漏れて来る甘い声に脳内はゆるゆると麻痺して行く。
「ッさく…ぃ、く…」
「何ですか?」
「…何、コレ」
そう言って宮田さんは舌を覗かせた。
舌先には、銀色の指輪。
「プレゼントです」
「うっかり飲み込んじゃいそうになった…」
「はは、済みません」
「ていうか…普通こんな渡し方する?」
「奇抜で良いでしょう?」
「もう…」
少し呆れ顔の宮田さんのこめかみにキスを落とす。
「お誕生日、おめでとう御座います」
「…恥ずかしいなぁ、もう」
こめかみを指で抑えながら唇を尖らせ此方を上目遣いに睨む。
「もう…可愛い人ですね」
「?何が?」
「いえ、何でも」
小さく苦笑して、細い躰を抱き寄せる。
「大好きです」
▲end