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キッチンに立つエプロン姿の宮田さんの背中を見ながら思った。
「…新妻っぽい」
「え?何か言った?」
「ううん、なぁんにも」
「そう…?」
ちょこんと首を傾げてからまた作業に戻った宮田さんを見詰めて、やっぱり思う。
「やっぱ、俺の奥さんだよな…」
いっそ、俺のとこに永久就職でもすりゃ良いのに。
俺が独占してしまいたい。
俺の腕の中だけで、微笑んで欲しい。
「ねえ、宮田さん」
「なぁに?」
「何か欲しい物とかある?」
「えー!?急に言われても思い浮かばないよぅ…」
「はは、そうだよね」
軽く笑って。
でも、プレゼントは決めてあるんだ。
俺の奥さんへのプレゼント。
「宮田さん、明日の夜は俺がメシ作ったげるね」
「…どうしたの急に」
「良いから良いからっ」
怪訝そうな顔の宮田さんの、しなやかな手に視線をやる。
手料理は嬉しいけど、水周りの仕事は手が荒れるから勿体無い。
折角綺麗な指に似合うの、見付けたんだから。
「明日、楽しみにしててね」
「?…うん…?」
誕生日プレゼントには、銀色の指輪。
▲end