■■ 君だけでいい ■■





ふと振り返って、貴方の顔色を伺う。

「宮田さん、飯どうしますか?」
「うーん……何でも」

此方を見もせずに、たった一言で俺を一蹴。
もう少し気を遣ってくれても…なんて思うのは俺の贅沢なんだろうか。

「何でもって一番困るんですけど」
「じゃあ…鈴木君が食べたい物で」

少し食い下がっても、また一蹴。
俺は宮田さんの事を聞きたいのに、つれない態度。

「それって、言い方変えただけじゃ…」
「そんな事無いって」

声色に残念さを滲ませると、それに気が付いたのかやっと此方を向いてくれた。
…首だけ。

「らしくないなぁ。随分マイナス思考だよ?」
「宮田さんが冷たいから」

苦笑いしてみせると、貴方は動きを固まらせて目をきょとんとさせて。

「…俺、何か変な事言いました?」
「ううん、そうじゃないけど…」

頭を横に振って、未だ何処か呆けた表情をして。
唇を尖らせて一言。

「僕、鈴木君と一緒に居るだけでお腹いっぱいだし」

…それは反則だろう…。

「鈴木君?」
「あ、あぁ…いえ…」

やばい、顔が熱い。

「?」
「何でも無いです」
「…何でも無い顔じゃないよー?」
「本当に何でも無いですって!」
「あ!照れてるんだ!」

ちょっとこっち向いて、なんて全身此方に振り向いて興味津々に覗いて来る貴方。

「照れて無いですッ」
「うっそだぁ」

小悪魔な貴方には振り回されてばかりだ。
でも、貴方に翻弄されるのも悪くない。
俺がこんな風に思えるのは、貴方だけで良い。
貴方以外、要らない。





▲end