■■ 君を置いてどこにも行かない ■■
真夜中、息苦しくて目が醒めたら横にいた筈の宮田さんが上にいた。
仰向けに寝ていた俺の上に旨い事俯せに乗っかって、すやすやと気持ち良さそうに寝ている。
頭は左肩辺りに、上半身は丸々俺に乗っかって、左足を俺の両足の間に滑り込ませている。
寝相も此処迄来るともはや器用の領域だ。
「…重い」
幾ら宮田さんが軽いと言っても、無防備に全体重を掛けられたら少し重い。
「宮田さーん…」
ぽんぽん、と背中を軽く叩いてやると、宮田さんは少し身じろいだ。
「ん…」
「宮田さん…起きて下さい」
髪が素肌に触れてくすぐったいです。…と口に出せはしないけど。
「さ……ぃくん…?」
「起きました?」
ぱちくりと見詰められたと思ったら、突然首にしがみつかれキスをされた。
「ちょっ…宮田さ…」
「良かったぁ…!」
ぽろぽろ涙を流す宮田さんに俺はおろおろ。
「絶対…もう絶対、僕を置いてかないでね…!」
「…夢でも見たんですか?」
背中を摩りながら、優しい口調で語り掛ける。
「俺は此処にいます」
「うん」
「宮田さんを置いて、何処にも行かないですから」
「うん」
「だから、安心して眠って下さい」
「…うん」
大人しく直ぐに眠った宮田さんの寝顔を見詰めながら、幸せの溜息を吐く。
手を伸ばせば宮田さんに触れられる。
先刻宮田さんにはああ言ったけど、本当は…。
本当は『行かない』んじゃない、『行けないんだ』。
依存してるのは俺の方。
宮田さんが居なくなったら、俺は…俺はどうなってしまうのだろう。
閉じられた瞳から溢れた一筋の涙を指でそっと拭って、柔らかい頬に口付けた。
▲end