■■ すべてをあげる ■■





貴方はいつもそうだ。
俺の気持ちに気付かないふりをする。
無邪気に笑って、俺を翻弄して。

嘲笑う。

そんな現実に視界が揺らいで。
嫌がる貴方の肩を掴んで壁に押し当てた。

「どうして…何で気付かないふりなんかするんですか…」
「…何が?」

無表情で言い放たれた一言に、カッと頭に血が上る。
悔しくて。
辛くて苦しくて。
貴方が俺のこの痛みを知らない筈が無いのに。

「んッ…!」

次の瞬間には貴方の唇を奪っていた。
顎を掴み、乱暴に咥内を弄る。
生暖かく絡み付く舌の感触にぞくりとする。

「…んン…っは、ぁ…す、杉…田く…!」
「…好きです」

唇を放して第一声は、余りにも情けない、告白。

「好き、なんです…」

何も言わない貴方の、真っ直ぐな視線が痛い。
そんな痛みにすら何処か愛しさを覚える。
この視線も、声も躯も心も何もかもが欲しい。
その為なら…

「宮田さんの為なら何でもする…!」
「じゃあ」

ゆらり、と。
細い指が俺の頬をなぞる。

「杉田君を頂戴」
「え…?」
「僕、杉田君の全部が欲しい」

壁を背に悠然と、何処か妖艶さすら感じさせて、貴方は口元を緩めた。

「杉田君をくれたら…」

瞬きみたいな短さで、唇に柔らかい感触。

「僕のすべてをあげるよ」





▲end