■■ お姫様はいずこ?  ■■





「平川くんっ」

興奮冷めやらぬ中、楽屋へ戻ろうとすると可愛い人に呼び止められた。

「ぁ、あのっ…」

何だか困った様な表情をしている。

「どうしたんですか?」
「あのっ…浪川くんに抱っこされたでしょ…?」
「ああ、はい」
「あの…」

そこ迄言うが、なかなか続きが出て来ない。

「平川くんはっ、浪川くんがっ、す…」
「す?」
「好きなの!?」

力を振り絞った様に言うと宮田さんは、恥ずかしくなったのか頬に両手をあて、あわあわした様な表情をした。

「好きって…そりゃ、真面目だし、良い奴なんじゃないですか?」
「ぁぅ……そ、そうじゃなくて…」
「?」

不謹慎だが、困った顔をしてる宮田さんは可愛いと思う。

「その、ぇと…」

…嗚呼、『好き』ってそっちの『好き』か。

「浪川くんは嫌いじゃないですけど…」
「え?」
「僕が好きなのは、宮田さんだけですよ」

そう言って、宮田さんの前髪を掻き上げ、額にキスをした。

「ぇ、え…!?」

真っ赤になった頬を必死で隠す宮田さんは、本当に可愛い。

「あ、あのっ、平川く…」
「何話し込んでるんですかー?」

タイミングを見計らった様に、浪川くんが宮田さんの後ろから登場した。
しかも、僕から宮田さんを引き離す様にちゃっかりと、宮田さんの両肩に手を置いている。

「なっ浪川くん…!」
「別に何にもないよ、お疲れ様って話をしていたんだ」
「ふーん…」
「あ、あの……な、浪川くん…」
「はい?」

恐らく、宮田さんは僕にした質問を浪川くんにもするつもりなのだろう。
顔がさっきとそっくりだ。
可愛らしい、困った顔。

「浪川くんは…っ、ひ…平川くんが……その…」

両肩に置いていた手も下ろし、宮田さんを真横から見詰める浪川くん。
反対側には僕。
真ん中には宮田さん。

「平川くんが好きっ!?」
「…好きって言うか…大事な仲間だと思ってますけど…」
「そ、そうじゃなくて、ね?」

嗚呼もう、可愛い。

「抱っことか、するから、あの……好きなのっ!?」

宮田さんの言う『好き』の意味を理解したのか、浪川くんはフッ…と笑った。

「ヤキモチですか?」
「ぇえッ!?違っ、そゆんじゃなくて…」
「照れなくても良いですよ。俺が好きなのは、宮田さ…」
「みやったさーん!!」

またも良いタイミングで、勢い良く岸尾くんが宮田さんに、抱き付く様に前方から肩を組んだ。

「お疲れ様っしたー!」
「ぉ、お疲れ様…。岸尾くん、元気だねぇ」
「何言ってんスか、打ち上げはこれからこれから!」
「テンション高いねぇ…」

そのテンションに圧倒されたのはどうやら僕だけではなく浪川くんもらしい。
岸尾くんの止まらない喋りに入る隙間が無い。

「宮田さん、グイグイ飲みましょうね!」
「僕、お酒弱いんだけど…」
「だいじょぶ!俺が介抱しますから!」
「「は!?」」

不覚にも、岸尾くんの発言に僕も浪川くんも同じタイミングで同じリアクションを取ってしまった。

「あ、平川さん、浪川さん。ま、良いや!」

『ま、良いや』て何だ。

「ちょっと宮田さん付き合って!」
「えっ、ちょっと待って、僕、平川くんと浪川くんに話…」
「いーからいーから!」
「ちょ、や、岸尾くーん!」

肩を組まれた宮田さんは抵抗も虚しく、岸尾くんに引っ張られて行ってしまった。

「「やられた…」」
「そもそも宮田さん、どっちに嫉妬してたんですかね…」
「「………!!」」

侮りがたし岸尾だいすけ…!






▲end