■■ 走れ唸れ華と散れ。  ■■





雨が続いている。
ここんとこ2、3日ずっとだ。

「俺、雨苦手なんスよね…」
「そうなの?」
「傘持ってても結局濡れるじゃないですか、ジーンズの裾とか肩とか!」
「まあ、確かに…」

幸季さんは苦笑をした。
その顔は存外可愛かった。

「雨はねぇ、空が泣いてるんだよ」
「…はぁ」
「誰かがとても悲しくて哀しくて、だから代わりに泣いてくれてるんだよ」

そりゃまた使い古された例え話と言うか…。

「誰かが…悲しい気持ちなんだねぇ…」
「悲しい…」
「ん?」
「あ、いや、何でも無いっス!」

俺は今何を言おうとした!?

『悲しいのは貴方じゃないんですか?』

有り得ない!
幸季さんに、そんな…そんな……!

「森田くん?どうしたの?」
「あ、俺…」

どうしよう…幸季さんの顔、真面目に見れねぇ…。

「…森田くんが悲しい気持ちなのかな」
「違っ…!」
「良かった。森田くんは元気が一番だもんね」

微笑った顔は晴天そのもの。

「森田くんが元気だと、僕も元気」
「ぁ、有難う御座います…」

何か照れる…。

「雨、止むと良いね」

ヤバい。

「?」

これは…………惚れた。






▲end