■■ 無敵ヒロイン  ■■





今冬は雪が降らない。

「やっぱり東京だからかなぁ」
「や、何か全国的に暖冬らしいじゃん?」
「あーあ。ゆーきー」

机の上に両手を伸ばし、いかにも退屈と言った感じで宮田ッチはふてくされていた。

「そんなに雪、好きだったっけ?」

そんな宮田ッチに苦笑気味に言うと、宮田ッチは笑顔で答えた。

「うん、大好き」

…今のは別に俺に言った訳じゃないのは百も承知なんだけど。
満面の笑みで『大好き』なんて言われたら、いやでも心臓が派手な音を立てる。

「スキーでもしに行く?」
「お休み無いのに、良く言う」
「だってさ、宮田ッチが喜ぶなら俺、何でもするよ?」
「そ、な……直ちゃん、恥ずかしい事平気で言う…!」
「そんな事無いって」

恥ずかしいなんて思わない。
俺の素直な気持ちだから。

「宮田ッチが望むなら、世界だって手に入れてみせるよ」
「そん…無理でしょ…」
「無理じゃないよ。宮田ッチの望みなら」

何でも叶えてあげる。
喜びは限りなく。
怒はマイナスに。
哀しみは排除して。
楽しみは最大限に。

「俺、宮田ッチのヒーローだから」
「直ちゃん…バカ」
「バッ…バカはないと思うよバカは!」
「でも、大好き」
「宮田ッチ…」

俺がヒーローで宮田ッチがヒロインの筈なのに、ヒロインの方が一枚上手なんて、ちょっと恰好悪いかも。
でも…悪くないよね。






▲end