■■ 三角形の途中  ■■





俺はずっとあの人の事をみて来た。
だから解る。
視線が一つ増えた事。


 -SideSuzumura-


内輪な飲み会の席、離れた席に座る宮田さんに視線を送る。
勿論宮田さんが気付く筈も無くて、森川さんと楽しそうに話してる。
隣の席をチラ見すると、櫻井が宮田さんをガン見していた。

「櫻井」
「あ?」
「眉間。すんげぇしわ寄ってる」

肩を叩くと櫻井は、不機嫌そうに此方を振り返った。

「解り易いなー、お前」
「…何が?」
「あ、宮田さんがこっち見てる」
「えっ」
「ウッソー。」
「謀ったな…」
「こんな古典的な引っ掛け、引っ掛かる方が悪いって」

あんまり簡単に引っ掛かるから面白くて思わず笑ってしまった。

「悠長にやってると、俺が攫っちゃうよ」

ジョッキ片手にニヤリと笑ってみせる。

「え…?」
「俺も宮田さん、狙ってるから」

それだけ言い残して、俺は他の人と話し始めた。
視界に時々宮田さんを収めながら。
俺はずっと宮田さんをみて来たから、櫻井には負けたくなくて宣戦布告なんかしたけど。
唯々俺は、ずっと宮田さんを見詰めるしか出来なくて。

「難しいなー」

ちょっとぼやいてみた。






▲end