■■ 星空と、月と。  ■■





「見て、満月だ」
「あ、本当ですね」
「東京の空じゃないみたい…」

季節の所為か空気は澄んでいて、空がよく見えた。
満天の星と、まん丸の月。

「…冷えますね」
「朝夜だけならもう冬みたいに寒いよね」

きゅ、と繋いでいた手に力が込められた。

「祥ちゃんは、あったかいね」

そう言って此方を見る宮田さんは楽しそうで、嬉しそうで。
可愛くて。

「宮田さん…」

愛しくて堪らない。

「今日は鍋でもやろうか」
「そうですね」
「何鍋が良いかなぁ」

足取りは遅かった。
二人して空を見ていたから。
余りにも綺麗だったから。

「宮田さんみたい」
「何が?」
「空。澄んでて綺麗だから」
「……恥ずかしいなぁ、もぅ…」

宮田さんを見ると、俯く横顔の頬は赤らんでいた。

「宮田さん」
「…何?」
「キス…したい」
「そ、外なのにっ」
「大丈夫、誰も居ないから」
「でも…」

此方を伺って顔を向けた瞬間に、キスをした。

「ふ、不意打ちなんて反則…」
「宮田さんがあんまり可愛いから」
「可愛くないよっ」

歩く速度を速め俺を引っ張る宮田さんは、俺の手を離さなかった。
星空と月の下。






▲end