■■ 限界バトル ■■
森川さん、櫻井さん、宮田さんの三人(とその他面々)が久し振りに、某聖獣の収録で揃った。
「兄者が一緒って珍しいですね」
「そうだな」
仲良さ気に話す二人を、一歩離れて櫻井さんが見詰めてる。
正確に言えば、二人を、じゃなくて、宮田さんを、なんだけど。
隙を見てるんだ。
森川さんから宮田さんを奪う隙を。
二人の息が止まった一瞬、櫻井さんが宮田さんに声を掛けた。
「宮田さん」
「え、なぁに?」
櫻井さんからすると作戦成功してやったりな筈だ。
一方の森川さんは、心の中で盛大に舌打ちをしてるに違いない。
一瞬不機嫌そうな顔をした。
「よっちん、何してるの?」
「鈴村さん。人間観察です」
「あー、あれねぇ」
「端から見てるの、結構面白いですけどね」
「でも入ってはいけないよなぁ。幾ら好きでも二人相手じゃ」
「そうなんスよ」
あれ、鈴村さん今何気に宮田さん好き宣言したんかな。
俺もつられちったけど。
「まあ、触らぬ神に祟りなし、俺は傍観してるよ」
「俺だって別に割って入る気は無いですよ」
会話しながらも、視線は宮田さん達から離さない。
宮田さんは天使の笑顔で二人の間にいる。
「事務所の傍に美味しい和菓子屋、見付けたんですよ」
「えっホント?」
甘い物で釣るなんて、櫻井さん、セコい。
「この収録終わり、行きませんか?」
「わぁ、良いねぇ」
森川さんに入り込む隙を与えない。
「そろそろお目覚に新しく何か買わないといけなかったんだぁ」
「朝から饅頭食べられるなんて宮田さん位ですよ」
「羊羹だって構わないよ?」
「いや、そういう問題じゃ…」
「幸季は和菓子が好きだな」
お、森川さん巧く入った。
「ネオロマの弁当も和が好きだしな」
櫻井さんの入れない話題。
巧い。
「お弁当は和ですよねぇ」
「一番しっくり来るよな」
ネオロマンス恐るべし。
弁当の話なんか入り込めねぇよ。
「和洋中あるんでしたっけ」
「そう!僕と森川さんは和派なの」
「一緒なんだよな」
櫻井さん…情報収集に抜かりが無ぇな。
弁当の話なんか出演者以外知らねぇよ。
(※イベントDVDの副音声で宮田と賢雄さんが話してるぉ)
「わざわざメールしてくれるから、出演してなくてもお弁当の事は解るんですよね」
「まあな」
森川さん…下らないメール送ってんな…。
「あ、森川さん、飴、食べます?」
「変な飴じゃないだろうな」
「違いますよ!」
「俺も貰っても良いですか?」
「うん。はい」
飴貰うにも必死の攻防。
「あれ、2人にあげたら残り1個だけみたい」
「…俺が貰う」
「俺が貰いますよ」
「あの、これ…」
「この1個が欲しいんだ」
「俺もです」
お、争奪戦勃発か。
「一人二個なんて駄ぁ目っ」
え。
「森川さんも櫻井くんも一個ずつ!」
「あ、ああ…」
「はい…」
「んー…」
悩んだ顔で宮田さんは辺りを見回した。
そして此方を見て閃いた顔をした。
「あ!よっちん!」
「ぅえッ?」
「飴、あげる!」
此方に向かって歩いて来る宮田さん。
そして森川さんと櫻井さんに睨まれる俺。
勘弁してくれよー…。
「はいっ」
「あ、有り難う御座います…」
掌にころんと転がるのど飴。
満面の笑みの宮田さん。
二人から睨まれる俺。
そんな二人に気付かない宮田さん。
そして睨まれる俺。
願わくば、今度から三角関係に俺が巻き込まれません様に。
▲end