■■ きみのて  ■■





宮田君が散歩に出ると言うから、付き合わせて貰う事にした。
何だか気恥ずかしくて、並んで歩けなかった。

「良かったの?」
「え、何が?」
「散歩。付き合ってくれて」

立ち止まらずに、両手を後ろで結んで僅かに此方に視線を送りながら、宮田君は訊いた。

「宮田君に置いてかれる方が嫌だよ」
「…それもそうか」
「そうだよ」

納得したようにまた前を見て歩く宮田君の背中を見詰める。
背中で結ばれた掌に視線を遣る。

『手、繋ごう』

口に出来ない、恥ずかしい本音。
突然ぱた、と足を止めて宮田君は此方を振り返った。

「ね。…手、繋ぎたい」

少し照れくさそうに此方を伺うその表情はとても愛らしくて。

「あ…、恥ずかしかったら良いよ!ごめんね、変な事言って!」

ぽかんとする俺に、宮田君は勘違いしてしまった様で。

「いや、違っ……繋ぎたい」
「え…良いの?気遣わなくて良いんだよ?」
「違うよ。俺も、繋ぎたかったから、手」
「ほんと…?」

歩みを進めて距離を縮めて来る宮田君が。

「はい」

差し出した手に少し緊張しながら、そっとその手を握った。
伝わる体温が心地良くて。
こんな時間が日常になれば良いと思った。





▲end