■■ 純真サクリファイス  ■■





ベッドが軋む音がする。
嬌声が聞こえる。
背中に掌の熱さを感じる。
シーツを握り締める。
石鹸の香りに混じって汗の匂いがする。
息が荒くなる。
口が渇く。
気持ちが良い。
気持ち良い。
気持ち良い。

宮田さんが、俺の下で、悶えている。

白い喉が仰け反って。
頬を染め、頭を振って必死に堪えていて。
ふと、俺が付けた胸の所有痕が目に入る。

──俺の五感の全てで宮田さんを感じてる──

「ッ…ふ、は…ぁあ!ぅあっ!」

甘い甘い喘ぎ声。

ぐ、ちゅ…ぐちゅ…

先走り液と唾液の混じる音。
結合部分が火傷しそうなくらい、熱い気がする。

「んっ…ぅ…!とり…ちゃ…!」

切なげに呼ばれて、胸が熱くなる。
躯を繋げるのは三回目…だろうか。
それ迄、この至福を何度夢に見ただろう。

一度動きを止め、宮田さんの頬に触れる。

「宮田さん……未だ…痛い…?」
「平気…っ、だから…」
「…だから?」
「ぅ……動いて…」
「了解、お姫様」
「ひ、ひめって…ッあぁ!ぁ、んっ…は、ぁ…あぁ!」

また腰を動かし始めると、過敏な反応が返って来た。

「ひぁッ!や、ぁ…あ!あぁ!」

躯を上下させる時に宮田さん自身が俺の腹で擦れる様に、躯を密着させて腰を動かす。

「や、あ!とぃ…ちゃ……っあ!はぅ、あ!あッ…ぁ!」
「宮田さん…っ、気持ち…良い…っ?」
「んっ!ぃい…ッ!擦れるの、…良い、の…っ、ぁあ…は…んゃッ!あ!」

掴まれた肩から、熱が伝わって来る。
強く強く、縋り付く様に掴む手。
快楽に身悶える清廉な躯は、限界に近かった。

「ッん…鳥ちゃ…ん、ふぁ、ぅ!…未だ…ッ、イかな…ぃ?」
「…どうして…っ?」

本当は解ってる。
宮田さんが、絶頂に近い。

「んっ…だって……ぁ、ぅあ…!」
「だって…?イきそう…?」
「そ…れは、あ…!やめ…ッ動か、なぃ…でッ!やぁ…んあぁ!だ…め…、ダメぇ…!」
「…イって良いですよ」

ずん、と一段と強く深く突き上げる。
熱い一点を目指して。

「やぁ、だ…め、…ッあ!は、ぅ…あ!あぁ!ッう……は、ぁああ…っ!」

きゅう、と中が締まって。
どくん、と腹の下で脈が打たれて。
白い液体が宮田さんの躯に飛翔した。

「はぅ……ぁ…あ、…鳥ちゃん…ごめん…なさ…」

ずるり、と未だ猛ったままの自身を宮田さんの中から抜く。

「どうして、謝るんですか?」

ベッドに仰向けになっている宮田さんの顔を上から覗き込む。
恥ずかしいのか、顔を横に向けて小さな声で話した。

「だって……ぁの、一緒に…イけなくて……」

素でこんな可愛い事を言うんだから、宮田さんは相当の小悪魔かもしれない。

「別に一緒じゃなくたって構わないですよ、宮田さんがイってくれたなら」

まさかこんな言葉を自分が使うなんて。
過去の俺が今の俺を見たら衝撃に固まるに違いない。
それだけ今の俺は宮田さんに、溺れてる。

「でも…やっぱ…」

ちらりと俺の逸物を一瞥した宮田さんは、申し訳無さそうに俺の頬に触れた。
それだけで、鼓動が高鳴る。

「その前に」
「え…?」
「綺麗にしないと」
「何…」

宮田さんの胸の位置迄顔を下げ、先刻宮田さんが吐き出した白濁をぺろりと舐める。

「なっ、何…」
「コレ。咽まで飛んでる」

舌を出しながら悪戯に笑うと、宮田さんはぺちりと俺の頬を叩いた。

「馬鹿…ッ!」
「ちゃんと綺麗にしてあげますから」
「え…」

吸血鬼の様に白い咽に吸い付く。

「と……ッん…ン!」

甘く苦い愛液を、肌と一緒に吸う。

「んっ……鳥ちゃ…んッ、は…ぁ」

ぴちゃぴちゃとわざと音を大きく出して、咽から胸、腹へと顔を移動させる。

「やっ、も、良い…っ!」
「でも未だ…」

宮田さん自身に触れる。

「んぁッ!」
「此処が残ってる」

残滓にまみれ、萎えた宮田さん自身をアイスキャンディーの様に舐める。

「ひぁッ!」

時々意地悪をして、弱い裏筋を舐め上げたり先端を舌でつついたりすると、可愛い嬌声が上がる。

「やぁッ!も、やめ…んン!」

玉を甘噛みしてから竿をぱくりと一口に飲み込んで、唇で下から上へ口を動かし、口を離した。

「ん……っ。鳥ちゃ…ん、は良い…の?」
「ん?何が?」
「その……それ…」

猛ったままの、俺の馬鹿息子。

「放っといたら収まりますし」
「でも…」
「じゃあ宮田さんが、くわえてくれますか?」

駄目元で言ったつもりだったのだが。

「…それで、鳥ちゃんが好くなるなら……良いよ」

はい?
今、何と?

「…どうしたの?」
「あ、いや…良いんですか?」
「良いよ?」

きょとん、としながら此方を不思議そうに見ている。

良いと言われても、宮田さんにそれをやらすのは…気が引ける。

「…やっぱり良いです」
「良くないよ!して欲しいって言ったの、鳥ちゃんじゃん」
「それは…そうなんですけど」

何だか…止まらなくなりそうだから。

「もう、良いから、仰向けに寝て」

ベッドを叩く宮田さんに大人しく従って、ベッドに寝転ぶ。

「ぁの…」
「やっぱり僕じゃ…役不足…?」

そんな顔某CMのチワワみたいな顔されたら、無碍に出来ない。

「いや…そう言う訳じゃ…」
「じゃあ……させて…?」

肘を着いて起き上がろうとした瞬間、快感に背筋がぞくりとした。
宮田さんが、俺のを、口に含んでいた。

「みゃ…た、さ…!」
「ん…ふ、ぁ……何?」
「舐めて貰うだけじゃ…止まらないかもしれない…」

ちゅ、と口付けたりぺろりと舐めたり、弄ぶ様に水音を立てながら、宮田さんは「良いよ…」と言った。
その顔は快楽にとろけていて、余りにも扇情的で。

「ッ…宮田さん、口放して」
「ふは…ぅ?」
「寝て、下さい…こっちに」
「うん」

自分が寝ていた所に宮田さんを寝かし、上から覆い被さる。

「もう一度……挿入れますよ」
「ん…」

宮田さんの脚を開かせ、膝の裏を持ち上げた。

 ぐ…っ

狭く締まった蕾に、猛った自身をねじ込む。

「ぅ…ッ痛…」
「痛いですか?」
「平気……だからもっと、好きにして良いよ…」
「宮田さん…」
「鳥ちゃんになら…酷くされたって、平気…だから……好きにして、良いよ…」

ぷつん、と理性の切れる音がした。
そこからは記憶が朧気にしかない。
唯、一心不乱に、欲望のままに抱いて、キスをせがんだ。

気が付けば俺は、腰を打ち付けるのをやめて荒い息をしていた。
見下ろせば、涙をためた瞳。

「はぁ…ぁ…中に…出した…」
「あ、済み…ませ…」
「ううん…怒って無いよ。嬉しい…よ」
「宮田さん…俺…」

こんなに相手を想ったセックスは初めてだから。
宮田さん無しの世界なんて考えつかない。
宮田さんが大事だ。
大切だ。

──宮田さんを愛してる──

勿論、口には出せないけれど。
どろりと絡む残滓すら幸せに思える。

初めて、相手を大切だと思って躯を繋げた。





▲end