■■ 風‐TransparentVent‐  ■■





お前を見ると。

「ッ幸季」
「あ、森川さん」

お前の笑顔を見ると、自然になれる。

「待ったか?」
「…ちょっとだけ」
「悪かったな」
「いえ。僕、待つの嫌いじゃないですから」

微笑って俺の横に並んでくれる幸季が唯、愛しい。

「今日は森川さんの奢り?」
「いやいやー」
「えー!森川さんのケチー!」

ころころと表情を変える様はまるで子供の様なのに。
時折、全てを悟った様な、とても穏やかな表情(カオ)をしている。
まるでピーターパンだ。
大人の様な、子供の様な。

「…森川さん?」
「あ、いや……幸季、お前幾つだっけ?」
「33です。今年34」
「そうか」
「急にどうしたんですか?」
「いや…ふと。」
「はぁ…」

納得した様な、してない様な、そんな顔で幸季は此方を見上げた。

「良し!今日は奢りだからいっぱい食べるぞー!」
「ちょ、未だ奢るなんて言ってないぞ!」
「今日の森川さん、らしくないから、奢り!」

『らしくない』
そうかもしれない。
幸季は本人の気が付かない所で、俺の全てを見透かしているのかもしれない。

「森川さーん!」
「ちょ、待てよ幸季!」





▲end