■■ 雪‐BlancNeige‐ ■■
「童話の白雪姫の王子様って、死体嗜好家だったんだって」
唐突な会話の始まりにも、慣れて来た。
「したい…しこうか…?」
「生きてる女の人には興味無かったんだってさ」
「ああ、だから白雪姫の眠った躰を…」
「うん。でも結局、白雪姫は生き返っちゃって、王子様の愛は冷めちゃったんだって」
淡々と、クッキーを口に運びながら、残酷な童話を語る甘い声。
「はぁー…。結ばれて結婚してハッピーエンド、って訳じゃなかったんですね」
「ね。童話って、奥が深いねぇ」
そう言って貴方は、紅茶を一口。
「王子様も、白雪姫も、幸せにはなれなかったんだね…」
哀しそうに、貴方は微笑った。
「俺にはそんな趣味無いですけど…」
「?」
「どんな姿の宮田さんでも、愛し抜く自信はありますよ」
「嬉しい」
また紅茶を、一口。
「僕も浪川君のいれる紅茶、大好きだから」
「…紅茶だけ?」
「勿論……」
唇と唇が、触れた。
「浪川君も大好きだよ」
悪戯に微笑うこの人は。
「敵わないな…宮田さんには」
「そう?」
笑顔が愛らしくて。
俺のお姫様には、一生敵いそうにない。
▲end