■■ 約束のしるし ■■





楽屋に設けられた個々の席。
その一角に、小さく座る宮田君はどうにも釈然としない様な表情で、声を掛けずにはいられなかった。

「宮田君」
「…何?」

憮然とした声。

「怒ってるの?」
「別に。」
「…怒ってるじゃん」
「怒って無いッ」
「怒ってるよ。…俺が、何かした?」

ぴくり、と躯が動いた。

「思い当たる節がある?」
「うーん…」
「無いんじゃん…」

溜息をして、宮田君は肩を落とした。
それから小さな声でぽつり。

「ろみちゃんばっかり…」
「へ?」
「ろみちゃんばっかり弄って、折角隣の席なのに僕に全然話振ってくれない…」
「妬いてるの?」
「なっ、別にそんなんじゃ…」
「愛してるのにね」
「…そうだよ…」
「本当はまたステージの上で『愛してるよ』って言えたら良いのにね」
「…次やったら本物だと思われるよ」
「構わないよ」
「こにたん……馬鹿」
「馬鹿で結構。宮田君を愛してるの、本当だし」
「…四章はもっと弄って」
「頑張る」


あんな大人数の前で話し掛けたりなんかしたら心臓破裂しちゃうよ、宮田君。
でも応えられる様に、印を残しておくね。
首筋に吸い付いて痕を残す。
約束の印。





▲end