■■ トーンホワイト ■■
「やっぱり似合うね、白」
服の裾を引く手に振り返ると、あの人がいた。
「有難う御座います。…宮田さんも、似合ってますよ」
「そう、かな」
自分を一瞥してから少しはにかんで此方を伺うこの人は、可愛い。
腹黒だなんて嘘だと思う位。
「遊佐君が白で揃えよう、って言ってくれたからコレ着てみたんだけど…」
「似合ってますよ」
誰かが選んだ黒い服なんかと違って。
この人には白が似合う。
「此間の奴は、第四章ですか?」
「うん」
少し前に一緒に買い物に行った時、俺が選んだ水玉模様のシャツ。
「遊佐君の見立てだもん、着るの楽しみだよ」
この人は唐突に可愛い事を言って俺を惑わす。
「遊佐君は?」
少し不安気に、此方を見る透明な瞳。
「楽しみですよ」
俺が選んだ服を貴方が着てくれるのだから。
楽しみでない訳がないのに。
きっと、これは『楽しい』より『嬉しい』の方が正しいのだろう。
自分がこの人の一部を有する事になるのだから。
「似合うと…良いな」
「似合いますよ」
「本当に?」
「保証します」
「じゃあ、着てみるね」
シャツに袖を通す仕草が、俺を魅了してやまない。
▲end