■■ シラナイ ■■
俺は知らない。
宮田さんの事を、知ってるつもりで、全然知らない。
「そんな事考えてたの?」
「そ、そんな事て…俺は真剣に…ッ」
言葉は宮田さんの柔らかな唇で遮られた。
「うん、解ってる」
こういう時の宮田さんは妙に大人びていると言うか…年上だと言う事を思い出させる。
「俺は…宮田さんを…好きなのに…俺の知らない宮田さんが多過ぎて…」
「僕は、知らなくたって構わないんだ」
「どうして…」
「だって」
肩に頭を乗せられて。
寄り添われて。
心臓が早鐘の様だ。
「僕の知らない櫻井君の事は、これからいっぱい知ってけば良い…と、思うんだ…」
「これから…」
「うん」
肩から伝わる温もりが、堪らなく愛しい。
「だって僕と櫻井君にはこれからもずっと、未だ未だいっぱい、時間があるんだから」
一緒に笑って。
一緒に泣いて。
時には喧嘩もして。
仲直りして。
「そうやって、知らない櫻井君を、知っていけば良いと思うんだ」
「宮田…さん……何かプロポーズされてる気分です」
「あはは!そう言われればそんな感じ」
ふいに頬にキスをされた。
悪戯な笑顔。
「プロポーズ、しちゃった」
▲end