■■ 8センチ。 ■■





思い上がりでも良い。

「直ちゃん」
「何?」
「どの位かなぁ」
「何が?」
「僕達の距離」

ソファに二人並んで座ってて。
二人して前を向いてテレビを見てて。
そしたら、突然これだ。

「宮田ッチ、手、貸して?」
「うん」

ゆっくり差し出された右手を両手で包む。

「ほら、0だよ、距離」
「直ちゃん…」
「俺は、宮田ッチから離れたりしない」
「うん…」

手に力を込める。
勘違いも愛だ。

「遠くにいても、傍にいても、俺等の距離なんて、0だよ」
「うん……そう、だね」

下を向きながら、宮田ッチは微笑った。
哀しそうに見えたのは、気の所為…?

「0…。うん…0…だよね…」

言い聞かせる様に、宮田ッチは何度も呟いた。
握った手は、強く握り返されていた。

「ねえ、宮田ッチ」
「ぇ…」
「顔、こっち向けて?」
「ぅ、うん…?」

触れるだけの、口付け。

「ほら、0距離」
「…直ちゃん」
「離れない。俺は絶対…離れたりしない」
「…離れない…で…」

小さく呟かれたそれは、まるで祈りの様で。


思い上がりでも良い。
勘違いも愛だ。
地面から、8センチ。





▲end