■■ ねむりひめ ■■





貴方は、俺の腕の中で眠ってしまった。
最初は、世間話をしていた。
他愛無い話をしていた。
すると貴方はうつらうつらし始めて。
頑張って起きようとしている姿は可愛かったけれど、無理をさせたくはなかったから眠る様に促した。
一定のリズムで刻まれる寝息は、心地好くて。
貴方の声の寝息は、心地好くて。
月明かりに照らされた青白い肌が、透き通る様に綺麗で。
俺の腕の中に貴方が居る事を、まるで夢の様に感じる。

「……ッ…」

ふと、宮田さんの眉がひそめられて、宮田さんは俺の腕を強く掴んだ。

「…ん……」

苦しそうで、辛そうで。
どうしたら良いか解らなくて、取り敢えず手を握った。
強く、強く握られる手が切なくて。
頬をそっと撫でた。
それから、額に掛かる髪を除け、小さな頭をそっとそっと、何度も何度も撫でた。

「…ぁ……さく…ぃ、くん…?」
「宮田さん…起きましたか?」
「ぼく…」
「大丈夫ですから」
「ぇ…あ…」
「ちゃんと、居ますから」
「……ぅん…」

宮田さんは安心した様に微笑って、俺の胸に顔を埋め、小さく丸くなった。

この人の傍に、居るのは、俺だから。
俺が荊になってこの人を守るから。





▲end