■■ 〜まごころを君に〜 ■■





彼の周りには、風が吹く。

「宮田君は、良いね」
「あ、石田さん!」
「…宮田君のは、良い感じ」
「僕…の……?」

抽象的な表現に小首を傾げる宮田君の姿は、まるで小動物。

「そう、宮田君の…何て言うのかな。宮田君が良いんだよ」
「…良く解らないです」
「うん。旨く伝えられない」
「もぅ!何なんですか?」
「ふふ。忘れて」

嘘臭いとお墨付きの笑顔で宮田君に背を向ける。
宮田君の、僕の目を逸らさず真っ直ぐに見詰める姿勢。
…悪くない。

「あ、石田さん!」

追って来たのか、ぱたぱたと少し大きな足音を立てながら宮田君がやって来た。

「どうしたの?」
「渡し忘れてて……はい!」
「これ…」
「プロポリスのど飴です!良く効くから、石田さんにも!」
「有難う」

風に揺れる、白い花。

「あ、この後皆でご飯食べに行くんです。石田さんも行きませんか?」

花の周りには、その白さを称賛し、群がい、蜜を狙う虫。

「…そうだね。行こうかな」
「ッじゃあ僕、皆に教えて来ますね!」

来た時と同じ様にまた走り去る背中を見詰める。

綺麗な花を見付けた。
暫く、観察するのも悪くない。





▲end