■■ 月の魔法で恋したい ■■





風呂上がり、貴方が居る筈のリビングへ行くと何故か電気が消してあって、薄暗かった。

「宮田さんッ!?」

慌てて部屋中を見回すと、ベランダへ続く大きなガラス戸の前に、ちょこんと座り込んでる後ろ姿を見付けた。
お伽話に出て来るお姫様みたいに、恋焦がれた様に真っ直ぐに空を見上げていた。

「もう…どうしたんですか?」

横に座り、宮田さんの横顔を見詰める。
表情は夢心地そのもの。
俺なんか始めから居ないみたいに、呆っと空ばかり見て。

「…見て。満月だよ」
「え…?」
「月が凄く…眩しいの」

細い指先がガラス越しに月に触れる。
言われてみれば確かに。
電気の点いていない部屋でこんなにはっきり宮田さんの表情が見えるのは、月明かりの所為だったのか。

改めて、月から宮田さんへと視線を戻す。
俺の事をちらりとも見ないで、青白い月を一心不乱に見詰めていて。
その横顔は幻想的ですらあって、凄く、綺麗だった。

「宮田さん…」

それは、凄く自然に湧いて来た。
胸がとても熱くなって、鼓動が高鳴って。
柔らかな頬に手を添えて、唇を重ねた。
角度を変えて、何度も何度も、ついばむ様に口付ける。
暗がりで月明かりに照らされる貴方は、綺麗にも儚く消えてしまいそうで。
宮田さんの唇を舐めて先を促す。
応える様に薄く開かれた口に舌を差し込む。
生暖かい咥内で舌を動かすと、俺の舌を絡め取る様に宮田さんの舌が動いた。

「…ッ、あ…」

漏れる声は甘くとろけそうで。
頭が麻痺しそうだ。
歯列をなぞり上顎をつつき、性急に舌を動かす。
貪る様に、犯す様に。
唇の端から飲み込みきれなかった唾液が伝って、唇を離した。
唇を離す時ぴちゃりと水音がして、それが異様に生々しかった。
宮田さんの瞳はとろん、としていて、未だ何処か遠い処を見ている様で。
宮田さんの後頭部に手をやり、フローリングの床に横にさせる。
宮田さんは無言で、俺の為すが儘だった。

「…今日は抵抗、しないんですね」

苦笑しながら見下ろすと、唾液で光る唇が綺麗な弧を描いた。
その表情はさながら、天使の顔をした悪魔。
可愛い顔で俺を誘って、俺を貴方の中毒にさせる。

貴方無しでは、生きていけない。

「抵抗、して欲しかったの?」
「そういう訳じゃ…っん…」

言葉を口付けで塞がれて、かっと胸が熱くなる。

「…ッは…ぁ、ぅん…」

唇を離した瞬間の甘い吐息に、自らの中で何かが切れる音がした。

「ッ宮田さ…!」

シャツの襟をはだけさせ、月明かりに晒された白い首筋にきつく吸い付く。

「んっ…」

鬱血の痕を確認してから、改めてシャツのボタンを全て外す。
露になった真っ白く細い躰。
艶めかしさが妙に脳裏に焼き付く。

「ひぁっ!」

脇腹を撫で上げ、鎖骨に吸い付き、胸の突起を指で弾く。

「胸、弱いですね…」
「そんっ…ぁ…!」

撫でて、摘んで、爪を立てて。
鎖骨から唇を落とし、胸を舌で攻める。

「んっ…あ、ゃ…ッ」

俺の動きに合わせて嬌声が上がるのが妙に嬉しくて。
甘噛みしたり、吸ったり、散々いじりまわした後、宮田さんのズボンに手を掛けようとすると、小さな掌に制止された。

「…僕だけなんて…狡くない?」
「そ、うですね…」

言われてハッとしていると、宮田さんが俺のシャツのボタンを外しに掛かった。

「宮田…さん…」

手際は鮮やかで。
あっと言う間にボタンは全て外されてしまった。
宮田さんは俺のシャツのボタンを全て外すと、俺の下から起き上がって来た。
と、手早く俺のズボンのファスナーを下ろしてしまった。
ジー…と言うジッパーの音かやけに耳に残る。
頭が追い付かない間に突然、宮田さんは俺のモノを口に含んだ。
それは既にかなりの硬さにまで成長していて。

「宮…田、さ…ッ!」

生暖かい咥内で、宮田さんの口の中で、宮田さんの唇と舌で執拗になぶられて。
更に熱を帯び、質量を増す自身に顔が熱くなる。
窓辺、月明かりの下、宮田さんが、俺のをくわえてる。

「ふ…ッんぅ…ん…ぁ」

扇情的なその光景に眩暈すら憶える。

「駄…目だ、宮田さ…ッ」
「なに?」

口の中に含んだまま喋られて、舌の動きと呼吸が伝わって来て、堪らなくなる。

「っもう…出そう…ッ」
「…ぁ、ん…良いよ…ッふぁ……出して…」

宮田さんの口の動きが早まって。
俺の頭は真っ白になって。
次の瞬間には熱を放っていた。

「…ッ…ん、ぁ…苦い」
「すっ済みませっ!」
「ううん…美味しぃ…よ」

月明かりに妖しく微笑む宮田さんは、小悪魔そのもの。
俺を魅惑して止まない。
もう理性なんかは何処かへ飛んでしまっていて。

「挿れて…良ぃ…ですか…?」
「ゃ…待っ…、慣らさな…と…っ」

そう言って宮田さんは素早く下を脱ぎ、俺の腹の上に跨がった。
俺から見える光景は、淫猥そのもの。

「自分ばっかり…気持ち良…なる、なんて…」

唇に人差し指を当てられて。

「ダメだよ」

そんな風に微笑われたら、どうしたら良いか解らなくなってしまう。

「ゃ、あ…ん…っ…」

すると宮田さんは、俺の腹の上で自身を扱(シゴ)き始めた。

「…は…ッぁ…ゃン…」

もう、我慢出来なくて。

「ひぁッ!?や…っあ!」
「…気持ち良くするの…手伝いますよ」

桜色の胸の飾りを指で摘み、もう片方の手で自身をいじる宮田さんの細い指に手を添える。

「ぁ、あッ…やっ、そ…んぁ!…んンッ…やぁ!」

月明かりに照らされた乱れる宮田さんの姿は、卑猥で、淫びで、綺麗だった。

「は…ッ、ぁ…も…そろそろ…あんッ!」
「イって下さい…」

先走りの液が指に絡まってぐちぐちと淫猥な音を立てて。

「ひぁ…ッ!あっ…ゃ…ァ…ぁあ!」

嬌声と共に、宮田さんの白濁が俺の手の中に吐き出された。
掌の中に受け止めた宮田さんの熱。
受け止め切れなかった分が俺の腹にぱた、と滴れた。

「指…挿れますよ…」

宮田さんの白濁を潤滑油代わりに、腰を浮かせた宮田さんの秘所に中指を入れる。

「んぅ…ッ!」

つぷ…と言う感触と、中の熱さ、締め付け。

「…もう一本、イケそうですよ」
「ぇ…?ッぃあっ!」

白濁で滑りの良い中指と人差し指を、中でばらばらに動かす。

「や、ぁ…もっ…と…ッ奥…!」
「奥、ですか?」

確かこの辺り、と指を動かすと、ある一点を掠めた瞬間宮田さんの躰が大きく弓なった。

「やッ!…ぁ、あ…ゃあ、そこ…っ」
「此処、ですか?」
「あぁっ!ッん…だ、めぇ…やぁ…ッ!」

その一点ばかりを攻めると、宮田さんは目をぎゅっと閉じ、目尻に涙を浮かべながら頭をいやいやと振った。

「んッ…やっ…ひぁ!っあ、ン…ゃ!」

一度吐精した筈の宮田さん自身も再び頭をもたげ始めていて。
中をいじり回す指も3本に増えていた。

「ふ…ぁ!ッあ、ゃん…っ!」
「もう…良いですか…?」
「んっ…待って……自分…で、挿れる…から…」

そう言って宮田さんは俺の猛りきったモノを指で支え、その上にゆっくりと腰を落とし始めた。

 ぐちゅ…っ

「ん…ぅ」

小さな呻き声と共に、先端が中に侵入する。
俺の先走りと先刻散々塗りたくった宮田さんの精が混ざり合い、卑猥な音を立てている。

 ぐ…ちゅ

更に侵入をしようと自ら腰を動かした時、宮田さんが悲鳴にも似た声を上げた。

「ッいゃ!…待っ…」
「宮田さん…?」
「すご……お、きぃ…から…ゆっ…くり…挿れ…」

 ぐちゅんッ

「ひぁっ!?あ…ぁ…ッ!」
「貴方が…煽ったりするからいけないんですよ…」

強引に侵入した中はとても熱くて。
内壁がひくついてて。
締め付けも強くて。

「やっ、だめ…っん!」

圧迫感からか、痛みからか、宮田さんの瞳から涙が零れた。

「動き…ますよ…ッ」
「ッやぁ!んぁ!ッ…く、ぁ!」

 ぐちゅっ…ぬちゅっ…

「く…っ」
「んン…ッあ!ゃ…あっ…!」

宮田さんの細い腰を持ち上げ、中から出そうな程引き抜いて、また一気に貫く。
俺の上で、宮田さんの躰が、弓なりになる。
月明かりが厭に眩しくて。
宮田さんの喘ぎ声と、吐息と、体温と、痴態。
宮田さんの全てが俺の五感を刺激する。

「ひぁッ!…今、また…あッ、大きく…なっ…ゃあっ!」
「みゃ、た…さん…っ!」
「んぁッ、やっ…あっ、あ!…んゃ…っも、だめぇ…ッ!」
「一緒…に、イきましょう…!」
「んっ!…っふ、ぁ…あっ!ぁ…ッや…あ、ぁあッ!」

 どく…んっ

そして、二人同時に果てた。
俺の腹の上には宮田さんのが、宮田さんの中には俺のが。

「…は、ぁ……ん…」

互いの精を、互いの躰で感じて。

「っ済みません、俺、中に…」
「良ぃょ…」
「今、抜きま…」
「待っ…て…!」
「?」

繋がったまま、宮田さんは俺の上に倒れ込んで来て。

「もう少し…このままで…居させて…」
「宮、田さ…」
「ッひぁ!…今少し大きくなっ…」
「す、済みませ!」

宮田さんはくすくす微笑って、俺の鎖骨に口付けた。

「良いよ…このままで……このまま…」

何処か虚ろな宮田さんに掛ける言葉が見付つからなくて、さらさらの髪と背中を撫で続けた。
きっと、月の魔法の所為。
きっと、きっと…。





▲end