■■ 瓶詰めの赤い空 ■■





「ファンの子からプレゼントされたの」

嬉しそうな貴方が差し出した硝子の瓶には、個包装された飴が入っていた。

「飴は自分で?」
「ううん。飴も一緒だったよ」
「流石、宮田さんのファンですね」

両の掌に収まっている、脆く透明な瓶。

「落とさない様に、しっかり持ってないと駄目ですよ」

宮田さんはオッチョコチョイだから、と付け足すと宮田さんは頬を膨らませた。

「オッチョコチョイは余計!」
「はい」

笑って、瓶を持つ宮田さんの手に、触れる。

「櫻井君…?」
「手、温かいですね」
「うん…?」

次、宮田さんの家に行くと、瓶は窓際に置かれていた。
中に入っていた飴は数が減っていて、空に近かった。

「飴の減り、早いですね」
「そうかなぁ…。あ、櫻井君一個いる?」

『そうやって他の人にもあげるから、早く無くなっちゃうんですよ』

飴と一緒に、宮田さんの心も配られているみたいで、嫌だった。
子供じみた、独占欲。

「…この瓶ね、こうやってかざすと…」
「?」
「空がね、映るんだよ」
「そら…?」
「夕焼け空だと、格別に綺麗なんだよ」

瓶をかざす白い手はか細く見えて。

「櫻井君も見てみて」

透明な、硝子みたいな。
赤い空に微笑う人。






▲end