■■ つぼみのままで ■■
憧れ。好き。
似た様な感情を混同してるだけだと自分に言い聞かせて早ンヵ月。
思考は堂堂巡りの迷路を彷徨ったままだ。
独り見詰めるのは、彼が気紛れでくれたキャンディー。
『ちゃんと美味しい飴だよ』
食べてしまうのが何だか勿体無くて、ジャケットのポケットに入れたままにしてあった。
脳に焼き付いた笑顔が、声がオーバーラップする。
手の平の中のキャンディーは、パッケージもぐしゃぐしゃになってしまって、中身もきっと溶け始めてるに違いない。
それでも食べる気になれないのはきっとこれが、貴方から貰った『初めて』だから。
自分で同じ飴を買って、食べてみたら、甘かった。
少し力を入れて奥歯で噛んだらパキッと良い音がして、砕けた。
貴方も、そうなんだろうか。
とろけそうに甘くて、呆気ない迄に脆いんだろうか。
もっと、知りたい。
貴方の味も、貴方の感触も。
知りたくて堪らないのに、この感情に説明なんてつけられない。
好き?…解らない。
好奇心なのか、恋愛感情なのか。
唯々、貴方が気になる。
焼き付いて離れない笑顔、耳に響柔らかいく鈴の声、そして。
手の平の中の、甘い筈の飴。
▲end