■■ お菓子をくれなきゃ ■■





「宮田さん」

少し浮かれながら呼び止めて、貴方が振り返った所で一言。

「Trick or Treat!」
「…浪川君」

きょとんとした瞳で俺を見上げて、貴方は言った。

「僕ちゃんとお菓子持ってるよ」

そして貴方は、えへ…と可愛く微笑いながらシャツのポケットに手を突っ込む。

「…あれ?」
「どうかしました?」

貴方の事だからてっきり直ぐに飴が出て来るかと思ったのに、貴方は焦った様にがさごそと探してる。

「おかしいな…確か此処に…あれ?」
「ひょっとして、無いんですか?」
「ちっ違うよっ!ちゃんと……あ」

思い付いた様に掌を合わせ、貴方は気まずそうに此方を上目遣いで見上げた。

「今朝…めぐーに会った時あげて…」
「それが最後の一つだったんですね」
「…そう、みたぃ」

でも、どちらかと言えばその方が都合は良い。

「じゃあ、悪戯しちゃいます」
「えっ!?でもっ」
「今夜、愉しみにして下さいね」
「やっ…あの…ッ!」

宮田さんの言い訳が始まる前に、口付けて塞いでしまう。

「んっ…ふ…ぁ、だ、誰か来る…かも…ッん!」
「それも悪戯の内です」
「ッばか!」

…今夜が愉しみだ。





▲end