■■ わがままスイーツ ■■
小さな掌に背中を叩かれて振り返ると、目線より低い位置に自分を見上げる小さな頭。
「安元君、料理得意なんだね」
「あ、はい」
それは、ステージの上で自分が話した小さな自慢。
「ねぇ、今度僕にケーキ作って」
そして、彼の小さな口から飛び出したのは何とも予想外な我が儘。
「ぇ…」
「とびっきり甘いのが良いな」
「あの…」
「生クリームいっぱい乗せてね」
自分の言葉はふわふわとかわされてしまって、暖簾に腕押し。
「宮田さん…」
「なぁに?」
やっと届いた声も、屈託の無い真っ直ぐな瞳で見詰められたら先を飲み込んでしまった。
「…次はいつ会えますか」
代わりに出て来たのは、彼の我が儘を全て肯定してしまう質問。
「そうだね、んっと…」
すると、彼は凄く真面目な顔で手帳とにらめっこを始めてしまった。
「…小動物みたいだ」
「え?」
「いえ、何でも無いです」
「そう?
でも楽しみだ、安元君のケーキっ」
満面の微笑でそんな事を言われてしまったら、応えずにはいられなくなってしまう。
後日、約束通り手製のケーキを現場に持って行った所、
はしゃぐ宮田さんの後ろから物凄い形相の櫻井さんに睨まれたのは別の話だ。
▲end