■■ あの日のように笑いかけて ■■





時々会ってる筈なのに、話すタイミングが掴めない。
あの人はいつも誰かと一緒にいるし、そういう時は大抵笑ってる。
かと思えば、一人の時は何処か遠くでも見てる様な目をしていたり。
寂しそうに見えるんだけど、そこに踏み込んで良いのかが解らない。
ちょっと前に話した時は笑っていた、微笑んでくれていたのに。

「頼ってくれっつったのに…」

忘れられてしまったのだろうか。
それとも、俺なんかじゃ頼りないとか?

「もう…何なんだよ…」

行き場の無い苛立ちに携帯を握り締める。
画面に表示されたあの人のアドレスを見詰めて、溜息をついた。

苦しいなら助けてあげたい。
辛いなら救ってあげたい。
これは俺の傲慢な我が儘なのだろうか。

「好き、なのに…」

次に会ったら、少し強引に話し掛けてみよう。
あの人に寂しそうな表情は似合わないから。
悲しい影に惑わないで。
あの日のように笑いかけて。





▲end