■■ 飴 ■■





「三木さんっ」

ぱたぱたと足音を立てながら走り寄って来る。
満面の笑みで可愛い声の後輩は、俺の服の袖を掴んで見上げた。

「飴あげますっ」
「…具合悪くなる奴か?」
「違いますよ!これはちゃんと美味しいのだから、三木さんにあげたかったんです!」

口を尖らせ拗ねる幸季の頭を撫で、すまんと謝ると彼はとても嬉しそうに微笑った。
そしてポケットを探るが、どうやら飴が見付からないらしい。
頬をぷくっと膨らませながら必死に探している。

「ちょっと待って下さいねっ」
「お前…今その飴を舐めてるのか?」
「え、はい」
「幸季、ちょっと寄れ」
「?」

身体が密着する位近付けると、突然唇を合わせる。
舌を差し込んで口内を弄りまわすと、幸季は苦しそうに俺の服の袖口を掴んだ。
唇を離すと、涙目の幸季と視線がぶつかる。

「飴、ちゃんと貰った」

舌の上に幸季の口から奪った飴を乗せて見せると、幸季は顔を真っ赤にした。

「もぅ…からかって…」
「ほら、行くぞ」

先に歩き出すと、慌てて俺の後をついて来る。

「三木さーんっ」

翻弄すれば面白い程振り回されてくれる、可愛い可愛い、

俺だけの幸季。





▲end